『解脱』
(げだつ)
くまどりん
創演:宝暦(ほうれき)十年(1760)

「景清物(かげきよもの)」のひとつ。
このお芝居も昔の脚本がなくなってしまっています。
平成4年正月に国立劇場で上演された際は、大正年間に復活上演されたものを元に現・團十郎がつとめています。
解脱とは、仏教用語で煩悩(ぼんのう)から解き放たれて悟りにいたることや、迷っている魂が安定した状態になることを言いますが、芝居の筋のほうは…
源平の世、悪七兵衛景清(あくしちびょうえかげきよ)は清水寺(きよみずでら)の鐘に閉じ込められた傾城・阿古屋(あこや)を助け出しますが、逆に彼女は色仕掛けで景清から平家の宝を奪ってしまいます。景清は女に欺かれたことを無念!と憤り、阿古屋を再び鐘に閉じ込めるのでした。
阿古屋が景清から宝を奪ったのは、実は、阿古屋の兄の出世のためです。平家の宝と景清の身を、源氏に引き渡せばたんまり褒美が出て、出世できるという兄の願いに、阿古屋は景清を敵に売ったのです。
阿古屋を鐘に閉じ込めて、景清は「解脱」します。平家や源氏がどうのこうのというこの世のわずらわしさ、惚れた振られた裏切られたなどと女にまどう煩悩など、さまざまな迷いの境地を去り、景清は生きながら雷神になる!阿古屋を助けようと鐘に手を触れる者は必ずカミナリに打たれるであろう!と言い捨てて、景清は何処へともなく飛び去って行くのでありました。
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