『奴道成寺』
(やっこどうじょうじ)
くまどりん
奴(やっこ)、つまり男が踊る道成寺というわけで、白拍子(踊り子)の花子に化けた狂言師・左近(さこん)が主役。
舞踊としての一番の見どころは、本家の『娘道成寺』と同様、よく「恋の手習い」と呼ばれるゆったりとしたくだり。  クドキといって、本来ここは、成熟した女の恋の心情をつぶさに描く部分ですが、『奴道成寺』では大胆なアレンジがほどこしてあります。
左近が、傾城と客と太鼓持ちのお面を、取っかえひっかえかぶることで、遊里の恋もようを「一人三役」で踊り分ける面白さ。  そこここにギャグもちりばめてあり、たとえば、 「末は こうじゃになぁ・・・」という歌詞は、『娘道成寺』では、花子が恋人との将来にうっとりと思いを馳せて、小指と小指をからませますが、『奴道成寺』では、「ふたりがヨボヨボの老夫婦になっても・・・」と、腰を曲げたり杖をついたりの振付けにアレンジしています。
もとになった『娘道成寺』をご存知なら、よけいにクスッとできる、こういったパロディーならではの描写を見つけ出すのも、観劇の楽しみでしょう。
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