『茨木』
(いばらき)
くまどりん
『茨木』の題名には「新古演劇十種(しんこえんげきじゅっしゅ)」という言葉が付きます。 これは尾上菊五郎家の「家の芸」ですよということ。 市川團十郎家の「歌舞伎十八番」「新歌舞伎十八番」に対抗して、五代目から六代目の二代にわたり菊五郎親子が完成させたものです。
尾上家の歴史をみると、妖怪変化の芝居との関わりが深く、「新古演劇十種」の大半も妖怪変化の舞踊劇です。
『茨木』の主人公は悪鬼の茨木童子。 源頼光の四天王の一人・渡辺綱に羅生門で斬り落とされた片腕を取り返すため、綱の伯母・真柴に化けて彼の住居を訪れます。 ここで右腕だけで踊るのが、舞踊としての技量の見せどころです。
対する綱、最高の見せ場は、幕切れ。 腕を奪い返して飛び去った鬼の行方に、太刀をぬき放ちつつ大口をあけた見得。 スケールは大きく、しかし決して下品ではない絵面です。 
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