『鰯賣恋曳網』
(いわしうりこいのひきあみ)
くまどりん
三島由紀夫が室町時代のお伽草子から想を得て、元禄歌舞伎の明るい豪しゃな味をねらって創作した三島歌舞伎の傑作。
鰯売・猿源氏が粋人も父、海老名なあみだぶつのはからいで大名に化けて、一目ぼれの傾城・蛍火のもとにのりこんだものの、呼び売りの寝言をいって正体を見破られるというユーモアたっぷりの作品。
猿源氏の魚づくしの物語、鰯の売り声を和歌に託してひとつひとつ云いぬけていく、なぞ解きゲームのような面白さなど、スリリングな見どころいっぱいの一幕です。
歌舞伎の様式美を十分知りつくしてひきこんだ三島ならではの大様でぜいたくな味わいのただよう笑劇。 のんびりした芝居の醍醐味が味わえます。
十七代目中村勘三郎と六代目中村歌右衛門のコンビにあてて、三島由紀夫が書いた作品。 昭和二十九年に初演の新しい歌舞伎ですが、竹本(義太夫節のナレーター)を大々的に活躍させるなど、いい意味で昔ながらの歌舞伎の味わいが、全編にみなぎっています。
三島のあのショッキングな最期を、歌右衛門は、「歌舞伎にとっても大変な損失だ」と言っています。 
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