『不動』
(ふどう)
くまどりん
本名題:『雷神不動北山桜・五段目大切』(ふりがな)
創演:元禄(げんろく)十年(1697)

市川團十郎家の屋号「成田屋(なりたや)」の由来ともなっている市川家信仰の成田山新勝寺(なりたさんしんしょうじ)のお不動様を舞台化したもの。
もともとは「雷神不動北山桜(なるかみふどうきたやまざくら)」という芝居の中のひとつで、同じく歌舞伎十八番の「鳴神(なるかみ)」の後にあたります。
筋立ては実に明快な勧善懲悪(かんぜんちょうあく)もので、登場する主役が、まさしく不動明王の姿そのものであるためか、お賽銭が飛んだという話も残るくらいありがたがられたお芝居です。
見事、大雨を降らせる作戦に成功した雲絶間姫(くものたえまのひめ)は、成功報酬として、愛する男とめでたく結婚することになります。
これを邪魔するストーカー男。
鬼と化したストーカー男の振るまいに、めでたい結婚式がだめになるか・・・とそのとき不動明王登場!
不動ですから文字通り動きません。
が、にらみます。
悪鬼を退治してくれるお不動さまの眼力の威力!
團十郎の「にらみ」は家の芸として有名です。
團十郎襲名披露口上のみ特別の趣向として「ひとつにらんでみせましょう」という言葉があって、片肌ぬぎ、三方を片手に「にらみ」の芸をいたします。
悪霊退散、まさに不動明王のご利益です。
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