『傾城反魂香』
(けいせいはんごんこう)
くまどりん
通称「吃又」(どもまた)としておなじみの一幕ですが、今はこの通称は使っていません。「土佐将監閑居」で上演。
これは近松門左衛門作の人形浄瑠璃。
お家のっとり騒動を扱い、上中下の三段に分かれて、「上の巻」に吃(どもり)の絵師・浮世又平(吃又)のはなしが入っています。
ストーリーの中心は、夫婦の愛情劇です。
二人は絵の恩師・土佐将監の住まいに出かけ、「土佐」の苗字を望みますが、許されません。
この夫を見て「手も二本、指も十本ありながら…」と嘆く女房おとく。
又平は死を決意して手水鉢に自分の姿を書くと、一念が通じて絵は鉢の裏側に抜けて浮かび上がります。
緊張した場面から一転して、「かかぬけた」(かかあ、絵がぬけたぞ!)と女房に叫ぶ大喜びの吃又。
土佐の苗字を許されて夫婦が花道にひっこむところは、ほのぼのと暖かく感傷的な場面となります。
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