本名題:雷神不動北山桜(なるかみふどうきたやまざくら) 三段目
創演:寛保(かんぽう)二年(1742)
歌舞伎十八番のひとつ。
文屋康秀(ぶんやのやすひで)の許婚の錦の前(にしきのまえ)が、髪の毛が逆立つという奇病にかかります。
文屋康秀の家臣の粂寺弾正(くめでらだんじょう)が、お見舞いに向かいます。
広間に通された粂寺弾正が、髭(ひげ)を抜こうとすると、その毛抜きが逆立ちしていることから「コレハ?」…
天井裏に隠れていた忍者が磁石をつかって姫の髪飾りをつけた毛を引き上げていた、というトリックです。
歌舞伎は古臭い…といいますが、どうしてどうして、当時の最新科学の磁力をたちまち応用して芝居に作りあげた所はたいしたもの。
それにこの弾正サンはなかなかの人物。
錦の前の館で家老の弟をくどいたり(これってホモ?)、腰元にしなだれかかったり、(セクハラ?)
いわゆるバイセクシャルの英雄です。
結局はどちらにもフラれてしまい、お客様に向かって言うことにゃ「近ごろ面目次第もござりませぬ」
とはいえ、敵の陰謀によるトリックを見破り、悪の手先をやっつけて、颯爽と花道を引きあげる、かっこよさ!
弾正(だんじょう)という名前は、悪人の代名詞のようになっていまして、悪企みをする武士に名づけられることが多いのですが、この弾正は違います。 |