鈴木多美 2014年1月
子供の頃、お祭りの縁日にずらりと並んだ屋台をワクワクしながら覗いて歩いた経験はありませんか。お楽しみの一つがお面売りだったと思います。流行の最先端を行く人気キャラクターのお面がズラリと並んで、売り子の叔父さんはお客が来るまでじっと座って待っています。
これが昔の頃はただじっと座ってもお客は来てくれません。当時の行商人は行き交う人々の足を止めさせようとあの手この手を考えたようです。歌を歌ったり面白い口上を述べたり、都会で流行する歌や踊りを披露して地方の人々を楽しませたそうです。
「面売り」に登場するのは面売りの娘とおしゃべりを生業とする「おしゃべり案山子」と呼ばれる大道芸人の男です。おしゃべり案山子が面売りの娘に「共同経営」を申し出て数あるお面を面白おかしく披露して売上向上を図る楽しい一幕です。
終戦直前の昭和19年初演で作詞作曲は野澤松之輔。振付は藤間勘寿朗(藤間良輔)。関西で活躍した舞踊家で、松竹新喜劇の藤山寛美の異母兄にあたります。 |