『鳴神』(なるかみ) 歌舞伎十八番之内
本名題:『雷神不動北山桜』
(なるかみふどうきたやまざくら)
くまどりん
高僧・鳴神上人(なるかみ しょうにん)は、天皇に頼まれて王子誕生の祈りをささげました。 誕生のあかつきには北山に上人のための戒壇(かいだん)を建ててくれる、という約束です。 ところが、王子が生まれたのに天皇はその約束を果たしません。 怒り心頭の上人、北山の滝つぼに八大竜王を閉じ込めてしまいます。 降雨をつかさどる八大竜王が身動きをうばわれたために、国中が日照り続きとなり、干ばつで民百姓は困り果てています。 というのが、この一幕までのお話です。
さて、天皇は宮仕えの絶世の美女・雲絶間姫(くものたえまひめ)を北山の岩屋におくり込みます。 色じかけで上人をメロメロにし、そのスキに竜王を逃がして雨を降らせよう、というコンタンです。
「雨を降らせる」のが役目だから、その名も「雲の絶間」とは見事なネーミング。 彼女が、死別した恋人との寝物語をタップリ語るにつれて、気高い上人が次第にムラムラとしてくるのが前半の見せ場。 ここでは、上人の二人の弟子・黒雲(こくうん)と白雲(はくうん)のコミカルな芝居も大切なポイントです。
色じかけはますますエスカレートし、姫は持病のさしこみ≠ェ起きたとハラをかかえこむ。 上人が介抱するうちに姫の乳房に触れてしまいます。 生まれて初めてえもいわれぬ感触に我を忘れる上人。 手は次第に胸から下がっていって…
きわどいシーンですが、舞台が下品にならないのが歌舞伎の様式美。モーションをかける姫以上に、上人にセックスアピールがあるからです。 こんにちでいうところの「抱かれたい男」ランキングの上位に食い込む鳴神!ってとこでしょうか。
それはともかく、姫の計略はまんまと成功。 上人は酒まで呑まされ、へろへろにされて、竜王を解き放つ方法を姫に教えてたあげく、酔いつぶれてしまう。
目覚めると、雨ザァザァ、雷ゴロゴロ。 騙されたと悟った上人は、さて・・・
ロマンティック・ヴァイオレンス・アクション歌舞伎!音楽も大道具も小道具も衣裳も鬘も大活躍!
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