明治5年に黙阿弥がつくった松羽目(まつばめもの: 能の作品をまねて、背景に松が一本描かれているだけの簡素な舞台での舞踊)。 「松羽目もの」は、俳優の動きひとつで、どんな場所にもなるという、素晴らしい演出です。
「連獅子」では、中国は清涼山(せいりょうざん)という聖地が、舞台に現れます。 そこに、親子の獅子が住んでいるとのこと。 獅子は、百獣の王といわれ、たとえ自分の子であっても、王になるにふさわしいかどうか、親は試さねばなりません。
最初に舞台に登場するのは、獅子ではありません。 狂言師の二人です。 獅子の様子を踊ってゆきます。 前半のクライマックスは、親獅子が子獅子の力を試すため谷底へ蹴り落とす場面。
自分で蹴り落としておきながら、心配になる親心という・・・ でも、見事に駆け登ってくる子獅子という、頼もしい感動。
見どころは後半にもあります。 能装束(のうしょうぞく)に隈取りの形となって、親子の獅子は、そろって勇壮に舞い狂います。 毛を前へ振り出して波打たせるのを髪洗い、舞台を叩くように打つのを菖蒲(しょうぶ)打ち、大きく頭の上でまわすのを巴といいます。
どれも首で振るのではなく腰で振る、というのが口伝。
長唄の終曲は、獅子ものお決まりのことば。 「獅子の座にこそ なおりけれ」 めでたしめでたし。 |