人形は身軽
さあ姫はこの危難を知らせたいが、陸を走っては追いつけない。「翼が欲しい羽が欲しい」とあせる。その焦燥感や恋心の激しさを特異な動きで表します。
そして姫が諏訪法性の兜に祈ると、諏訪明神のお使いの狐が現れる。その狐達に導かれ守られて、氷った諏訪湖を飛ぶがごとくに勝頼のもとへ…。諏訪法性の兜を手にしてからの八重垣姫は文楽では人形の身軽さが生かされ、人間では表現できない、飛ぶような激しい動きが見られます。
伝説を活かして
諏訪湖は氷ると、狐が渡り初めをしてから、人が渡るという。また氷の亀裂が盛り上って土手のようになる。これは「御神渡(おみわたり)」と言って、諏訪上社の神様が諏訪下社のお后(きさき)の女神のもとへ通う道だという。何ともロマンチックな言い伝えです。
このような伝説が巧みに活かされ、神秘的・感動的な幕切れとなります。ヒロインの八重垣姫は、『祇園祭礼信仰記』の雪姫・『鎌倉三代記』の時姫とともに三姫(さんひめ)と言われる中でも最も難しい大役です。
また将軍暗殺犯の正体は、美濃の斎藤道三。奇想天外より来る、奇抜な話や謎の人物・事件の連続する、近松半二の傑作です。イヤホンを通して、開演前に詳しくお話しします。
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