怪談をリニューアル
『新皿屋舗月雨暈(しんさらやしきつきのあまがさ)』は、前半は通称『お蔦殺し(おつたごろし)』、後半は『魚屋宗五郎』と呼ばれ、今回は『魚屋・・・』のみの上演です。
今回上演されない『お蔦・・・』のパートの内容は次の通り:
磯部家の家臣 岩上典蔵(いわがみてんぞう)はお家乗っ取りを企んでいて、また殿様 主計之助(かずえのすけ)の妾(めかけ) お蔦に横恋慕していました。お蔦は典蔵に手籠めにされそうになりますが、家中の浦戸紋三郎に助けられます。典蔵は拒絶された腹いせとお家乗っ取りの企みを聞かれた口封じのために、お蔦に紋三郎と不義密通の罪を着せて拷問しました。典蔵の讒言(ざんげん)を聞いた主計之助は嫉妬と酒乱のあまり、お蔦を屋敷の井戸に斬り落とし、その井戸にはお蔦の幽霊が出るようになりました。
作者、河竹黙阿弥(かわたけもくあみ)
はこの『お蔦・・・』のパートを、それより140年ほど前の『播州皿屋敷』というお芝居を下敷きにして書きました。タイトルにある「新皿屋舗」は、その先行作をリニューアルしたという意味です。そしてこの『播州・・・』は有名な怪談「皿屋敷」をベースにしてつくられました。
一枚・・・二枚・・・
さて、その怪談「皿屋敷」は、いくつかバリエーションがあるようですが、基本形は、武家勤めする腰元のお菊が、家宝の十枚組みのお皿のうち一枚を過って割ってしまい(あるいは失くしたと濡れ衣を着せられ)、主人に折檻(せっかん)された挙句、井戸へ投げ込まれた。その後、お菊の亡霊が夜な夜な井戸から現われ、恨めしげに「一枚・・・二枚・・・」とお皿を数える、というものです。 |