インドのお話がルーツ
このお芝居の基になったのは「太平記」や「今昔物語」に取り上げられている一角仙人(いっかくせんにん)の説話で、能にもこれを下敷きにした「一角仙人」という演目があります。そもそもはインドで生まれたといわれるこのお話を太平記の記述に沿ってご紹介してみましょう。
坂道で滑った原因は…
メス鹿の腹から生まれ、額に一本の角を持つ一角仙人はさまざまな修行を積んだ末にハイレベルな能力を持つようになりました。
ある日、一角は谷へ下る坂道の途中で、足を滑らせて転んでしまいます。道は湿り、岩は苔むしてツルツルしていたのです。一角はムッとして「わしは何故ここで転んだのだろう?」と考えました。そして「雨が降って道が湿っているからだ」→「雨はいったい誰が降らせる?」→「雨を司る龍神が降らせる」と思いをめぐらし、ついには「自分が転んだのは龍神のせい」という結論に達します。やがて一角は地球上の七つの海を隅から隅まで捜索し、大小すべての龍神を捉えて岩の中に監禁してしまいました。
修行が足りない証拠
果たせるかな雨は一滴も降らなくなりましたが、そのせいで世界中が大干ばつに苦しみはじめます。 |