修善寺と「修禅寺物語」
岡本綺堂(おかもときどう。1872~1939)が修禅寺宝物館所蔵の「古ぼけた木の面」に想を得て、『修禅寺…』を書き、それが2代目市川左團次の面作師、夜叉王(おもてつくりし、やしゃおう)などで初演されたのは明治44年(1911)。現代語での歌舞伎が新鮮に感じられたこともあって大当たりし、修善寺(静岡県伊豆市)と言えば『修禅寺…』となり、修善寺の名はこの作品によって全国に知られました。
修善寺は弘法大師が開いたと言われる温泉地で、明治時代以降、作家(夏目漱石・岡本綺堂・泉鏡花・島木赤彦・芥川龍之介ほか)、役者(初代中村吉右衛門ほか)、俳人(高浜虚子ほか)、画家(横山大観・安田靭彦ほか)など多くの文化人が湯治に訪れています。そのため昔から郷土に対する意識が高いのは感心すべきことで、修善寺の歴史や文化・ゆかりの人物などに関して詳説された『修善寺の案内』が刊行され、修善寺郷土資料館で入手できます。
頼家祭り
源頼家(みなもとのよりいえ)の命日7月18日頃(年によって数日前後する。今年は7月17日)には毎年、修善寺で頼家祭りが行われます。メインイベントは暗殺された頼家とその家臣の霊を慰めるために、修禅寺を起点に、十三士(頼家の家臣13名)の墓、頼家の墓にお参りをして修禅寺に戻る行列。この行列は、近年は頼家・妻 若狭の局・息子 一幡・十三士から成り、史実に合わせているようですが、平成18年など以前は寺の僧侶、鉦を鳴らし鎮魂歌を歌う尼、頼家・かつら・かえで・夜叉王・北条方の兵に扮した人々、母親に手を引かれた稚児姿の地元の子供たちから成り、地元の方がかつら・かえで・夜叉王と、『修禅寺…』に出てくる人物を演じて行列に参加していたことから、この作品が修善寺にとって、いかに大きな存在であるかが分かります。お参りには観光客も参加できるので、単なる見物ではなく、地元住民および観光に携わる人・観光客が一体になれるお祭りであるというところが素晴らしいと思いました。
朗読会や和紙作りも
平成15年2月には修善寺総合会館で『修禅寺…』の歌舞伎公演があり、地元の児童も鑑賞しました。また、作者の岡本綺堂が滞在した新井旅館や修善寺総合会館など温泉街のいろいろな所で、しばしば『修禅寺…』朗読会が催されます。
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