五大力菩薩から
『盟…』は『忠臣蔵』の世界を背景にしているとともに「五大力(ごだいりき)」という風習を趣向に据えた「五大力物」と呼ばれるお芝居のひとつでもあります。
五大力とは、そもそも仏教で、仏・法・僧の三宝と国土を護るという大力を持つ5人の菩薩(ぼさつ)を指すのですが、この五大力菩薩が道祖神(どうそじん、村の守り神、子孫繁栄、旅や交通安全の神)信仰と結びつき、いつしか手紙の封じ目に「五大力」と記せばその力で手紙が無事に届くと考えられるようになりました。江戸時代には、主に女性が手紙を出すとき、相手に間違いなく届くようにと願って、封じ目に「五大力」と書いたといいます。今の「親展」に近いのですが、どちらかと言えば、お呪(まじな)いのようなものだったようです。
貞操の証
信心深かった江戸時代の人々はこの“ 五大力 ”をさらに別の意味に発展させました。女性がこの「五大力」を愛する男性への貞操の証(あかし)としました。「この人一筋に」と思う男がいる女性が自分の櫛(くし)や簪(かんざし)、煙管(きせる)、三味線などの身の回り品に「五大力」と彫ったり、書いたりするようになったのです。ちょうど「○○様命」と同じ感覚でしょう。 |