| 『加賀見山旧錦絵』 （かがみやまこきょうのにしきえ） |
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名のとおり加賀の国、前田藩のお家騒動を題材にした長編のうち、身分、役職の異なる三人のヒロインの葛藤（かっとう）を描いたくだりです。
姫の信任あつく、蘭奢待（らんじゃたい）の名香と、旭の弥陀の尊像をあずかる中老（女中のナンバー2）・尾上（おのえ）。 局（つぼね＝ナンバー1））・岩藤（いわふじ）は「なんでナンバー1の私をさしおいてナンバー2に大事な宝をあずけるのさ」とこれをねたんでさまざまの嫌がらせ。 すさまじいイジメのはじまりはじまり・・・
岩藤グループＶＳ尾上グループ！
武家出身の岩藤は、武芸の稽古だといって、竹刀（しない）で町人出身の尾上をいたぶる・・・
決定的となったのは、「草履打ち」。 岩藤は、尾上があずかるお宝（蘭奢待の名香）を盗み出し、そのかわりにお宝の箱に「草履（ぞうり）」を入れる。
岩藤グループに加担する上役・剣沢弾正（つるぎさわだんじょう：弾正という名前は、悪役に多い！こいつもお家乗っ取りを企む奴）が、お宝を、上使（じょうし：江戸幕府の命令をもってくる使いの役）として受けとりに来る。 何も知らない尾上が、箱を差し出すと、中味は草履・・・・
「なんじゃこりゃ！」ということで、岩藤はその草履で尾上をぼこぼこに打ちすえる！ 職場で毎日コレでは、まいりますよね。
いじめにいじめられる尾上を助け慰めるのが、尾上の召使のお初（おはつ）です。 武道の苦手な尾上に代わって岩藤をこてんぱんに打ちのめしたり、「毎日毎日たいへんですね」と尾上の肩をもんだり・・・
でもそのかいもなく、イジメの苦しみに耐えかねた尾上は自害してしまう・・・・
さぁこみあげる涙とともに始まるお初の復讐！ 仇討ち本懐へと盛り上がっていく展開の面白さ！
そして見事岩藤を討ち、お初は尾上の名前を継ぎ、中老二代目尾上となる、というのがおおまかなストーリー。
武家奉公の女性の世界が中心のこのお芝居は、元来、春先に上演し「弥生狂言（やよいきょうげん）」と呼ばれました。
江戸の昔、春はお屋敷勤めの女性が実家に戻る（これを宿さがりといいます）、という時期。 その折、彼女たちはこういうお芝居を見て、上役からのイジメといった普段のうっぷんを晴らしたといいます。
さぁ、いじわるな上司のもとで働いているみなさん、あなたもこのお芝居を観て、スカッとしてみませんか？！
ところが、その岩藤が亡霊となって逆襲してくる、『加賀見山パート2』があるのです！
⇒『加賀見山再岩藤』（かがみやまごにちのいわふじ）へ
