『道行恋苧環』
(みちゆきこいのおだまき)
『三笠山御殿』
(みかさやまごてん)
くまどりん
ヒロインお三輪は造酒屋の娘。  えぼし職人の恋塚求女(こいづかもとめ)という美青年に、恋をしています。
その求女のもとに、夜になると高貴な女性がたずねてくる。  どこのだれかを知るために、求女はその女性の裾に赤い糸をつけます。  その求女の裾に、お三輪は白い糸をつけます。  高貴な女性を追って、廻る廻る糸車。 ここまでのくだりが、舞踊『道行恋苧環』です。
たどり着いたのは、三笠山御殿。  謎の女性は、天下を乗っ取った極悪人・蘇我入鹿(そがのいるか)の妹・橘姫(たちばなひめ)、  そして求女は、実は入鹿を倒そうともくろむ藤原淡海(ふじわらのたんかい)でした。
淡海の妻になるため、兄入鹿を殺す約束をする橘姫。  さっそく祝言を・・・というところにやってきたのが、求女を慕うお三輪です。  恋する相手に一目会いたいと広い御殿を、慣れぬ足取りでさまよっていると、意地悪な官女たちの登場。
「会わせてやる」という条件をエサに、いじめの限りをつくす官女たち。  祝言の、お酌係にさせてやるという言葉を信じて、ひたすらいじめに耐えるお三輪ですが、「作法知らずのいなか娘!」とクビになってしまう・・・・。
恋に破れたばかりか、乙女心をボロボロにされて、しょんぼりと去っていくお三輪の耳に、披露宴の楽しそうな声が・・・  「あれを聞いては・・・・・帰られぬ!」と、逆上して祝言をぶち壊しに駆け入ろうとするその顔には、まさしく「疑着の相(ぎちゃくのそう)」があらわれます。  思いもよらぬクライマックスが待っている一幕です。
官女たちのイジメの凄さや、勇士鱶七(ふかしち)の豪快さも見所(みどころ)。
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